新約聖書の最初にはイエス物語である4つの福音書があります。その中で「人の子」という言葉が76回出てきます。その最初の場面は、 『イエスは言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない。」(マタイによる福音書第8章20節)』 です。 聖書の知識も無く、参考書も読まずにこのイエスの言葉を読んだときには、人の子とは何を指しているのか分かりません。この「人の子」とはイエス自身を指しています。「私(自身)」とでも記載されていれば分かりやすいのです。福音書の記者は「人の子でありながら、神の思いを実現するために働いている私」とでも言いたかったのでしょう。 神がイエスを神の子としたのであり、イエス自身が自分のことを神の子と言ったことはありません。イエスの活動を知っていた弟子を中心とした人々が、イエスの十字架の後で、神がイエスに栄光をお与えになったのを知ったのです。イエスの活動とはどのようなものだったのでしょうか。 最近の聖書学は科学的手法を用いることによって大きく発展しました。1947年に発見された死海文書等をきっかけに聖書を歴史的に捉え直すようになったのです。福音書の言葉の背景は何か、著者の背景は何か、どこまでがイエスからの直接の伝承なのかが学者の間で合意されつつあります。私たちは、科学のおかげで信仰(宗教)の内容を深めることができます。 イエスの行いはと当時の人々の目にはどう映ったのでしょうか