サンパウロ通信


2004年10月 「ブラジル聖公会の分派問題」

 ブラジル聖公会レシーフ教区は、教区主教に指導される約30教会と補佐主教に指導される15教会に事実上分裂しました。同教区主教は同性愛問題を巡って強硬な保守主義を打ち出し、同性愛聖職を次々休職にするのみならず、全聖職に対して、同性愛を糾弾する誓約書への署名を強要しました。これに賛同しない補佐主教に指導された15名の聖職と15の教会は主教会に対して、教区主教の指導を受けることは信仰と良心に従って出来ない為、主教会のこれらの教会への介入を嘆願しました。この牧師と役員会連名による嘆願書を受けて、教区主教の指導に従えないこれらの教会と聖職に対し、出席主教全員の一致を持って、介入を決議し、これらの教会に対してのみの管理主教を任命しました。これらの措置は当然法憲法規に記載されていない事態に対する緊急措置であるため、超法憲法規措置と見る向きもあります。

 現在、レシーフェ教区主教はブラジル聖公会を離脱し、神学的保守主義を掲げるアルゼンチンを中心とする南アメリカ諸国で形成される管区(Igresia Anglicana del Cono Sur de America)に参加することを検討し、既にその旨を申し入れたとも言われています。またカンタベリーを軸とするアングリカン・コムニヨン以外の新たなアングリカンの交わり形成に密かに準備が進んでいると言う噂もあります。

 いずれにせよ、ある意味で事実上、ブラジル聖公会の中に主教会の決定を認めない新たなグループが存在することは事実で、同教区主教の懲戒問題を契機にブラジルに二つのアングリカン教会が存在するようになる可能性も大きくなりました。

 同性愛問題を巡って生じたこの分裂の騒ぎは、確かに地理学的な教区、管区定義が今一度問い直されているようにも思われます。同性愛問題は単に聖書的、神学的見地からのみで論議することは限界があり、文化社会的、歴史的見地からも議論されるとき、当然保守・レベラルの枠を超えた種々な見解が教会内に存在することになり、いかにして管区あるいは教区の決定に対して信仰と良心に従って従え得ない聖職・信徒に対していかに対処するか、が問われていることは間違いない事実のようにも思われます。

サンパウロ 伊東