サンパウロ通信


2004年9月 「超法憲法 規措置?」

南無主イエス・キリスト。

同性愛問題を契機として、世界の聖公会の従来の伝統では処し切れない種々な問題が提起されてきているように思います。

ブラジル聖公会でも既報のごとく、同性愛問題をめぐり2年前から現在に至るまで激しい議論が続けられています。

今回は主教会メンバーで徹底して同性愛に反対し、唯一の保守的福音主義者のレシーフェ教区主教が「アングリカン・コムニィオンの組織としての機構はその修正・革新を必要とするに至った。聖公会にあっては地理的(プロヴィンス、教区、教会)また法憲・法規的思料が支配的ではあるが、決して絶対的、静的なものでなく、また、歴史的例外措置を排するものではない」とし、カンタベリー大主教の10月に予定されている「同性愛問題諮問特別委員会の答申」の如何によっては、あるいはブラジル聖公会主教会の意向(同じく特別委員会で同性愛問題を審議中)如何によっては、世界の他の保守派と共同でカンタベリーとのコムニィオンからの離脱、ひいてはブラジル聖公会からの離脱の可能性を9月初旬表明しました。これに対して教区の補佐主教と15名(教区所属聖職42名の約三分の一)の司祭と信徒代表達が連名で、「如何なることがあっても、自分たちはブラジル聖公会を離脱しない」、とする署名入りマニフェストを発表しました。このマニフェストに署名した司祭と司牧教会への教区主教の直接的な嫌がらせが直ちに始まり、教区主教は教区方針に従わない司祭は休職処分に処する、旨の主教教書を発表しました。この教書に危機感を感じた補佐主教と15名の聖職は首座主教及び主教会に直訴し、16日臨時主教会が開催され、欠席したレシーフェ教区主教を除く全員一致で「ブラジル聖公会への忠節を誓い、良心と信仰に基づきレシーフェ教区主教の司牧に従い得旨を表明した聖職と教会に対してのみ、教区主教の司牧を一時的に停止し、隣接のブラジリア主教を彼らへの主教会の特別スパーバイザーと任命する」事を決議すると共に、直ちに同主教への懲戒手続きに入りました。レシーフェ教区主教への懲戒手続きの事由は;
1)ブラジル聖公会法憲法規への遵奉違反。
2)主教按手式において約束したことへの違反。
3)他教区での堅信式の実施(米国で退職主教とともに、保守派教会で当該教区主教の許可なしに100名前後に堅信を執行した)。

事実上、分裂したレシーフェ教区への主教会の介入は、ブラジル聖公会法憲法規上疑問も多く、教区主教と意見が異なる聖職の役職保全、経済的報復阻止の緊急事態(懲戒手続きに数ヶ月を要する為)における超法規的な措置とはいえ、皮肉にも当のレシーフェ教区主教が主張する「超法憲法規的手段」となりうる可能性もあります。早速、同主教から首座主教に対して、このスパーヴァイザー派遣は違法であり、受け入れられない、旨のマニフェストが先ほど発表されました。

英国、米国、カナダ聖公会では同性愛問題に関するリベラルな態度を不服とする教会が、教区主教以外の主教の司牧を要請しているわけですが、ブラジル聖公会では逆に、同問題にリベラルな聖職と教会が教区主教以外の主教の司牧を求める初めてのケースとなったようです。今後、機構としての教区、教区の集合体としての管区そのものが問われるように思います。

現実には15名の聖職そして家族、及びこれらの聖職を支持する15の教会の信徒の不安・焦燥・懸念は大きく、主教会メンバー一同、効果的な措置をとるすべもなく、深い悲しみを感じております。ブラジル聖公会の痛みを覚え、是非ご加祷戴きます様お願い申し上げます。合掌。

サンパウロ 伊東