サンパウロ通信


2002年4月 次期主教選出委員会の果たした役割(サンパウロ教区のテストケース)

サンパウロ教区は信徒数5千、聖職35人のブラジル聖公会の中でも大きくない教区である。

しかし、地理的にはサンパウロ州とパラナ州、マットグロッソ州を管轄に置き、日本国土の2倍の面積を有している(一番遠い教会はバスでサンパウロまで16時間掛かる)。

この地理的に拡散した教区で主教選挙を考える時、その特殊性が今回「次期主教選出委員会」を生み出したとも言える。

その意味でそのまま他の国の聖公会の参考とはなり得ないかもしれないが、一つの試みとしては、当然問題もあるが、それはそれなりに評価出来るのではないだろうか、とも思うが如何であろうか。

約10ヶ月に亘る「次期主教選出委員会」活動は;

  1. 「今、求める主教像」の信徒(教会委員会)・聖職へのアンケート。
  2. そのアンケート結果の全教会・聖職への配布。
  3. 全教会信徒・聖職への主教候補推薦依頼(推薦に際しては被推薦者の同意が義務付けられた)。
  4. アンケート結果(今、求める主教像)に関する各被推薦者の各項目への所信表明依頼及び回答の全信徒代議員・聖職への配布。
  5. 聖職修養会での被推薦者への質疑応答。
  6. 委員会メンバーによる被推薦者への面接。
  7. 全信徒代議員・聖職への被推薦者の面接結果の報告と当人の詳しい履歴と所信表明のビデオ配布。
  8. 投票前夜の全代議員・聖職出席の修養会での候補者への質疑応答。

結果的には臨時教区総会での主教選挙では、被推薦者2名と、被推薦者であったが本人の意思で降りた候補者1名が再度推薦され、計3名の被推薦者間での投票となった。

法憲法規上はこの委員会の活動はあくまで、法憲法規外の補助的な活動ではあるが、教区総会で承認された主教選出プロセスを経ないで、投票当日候補者を推薦する事の法的権利は当然としても、道義的な是非が投票日にも議論された。

当然のこととして総会議長の現主教は委員会の活動はともかく、具体的な投票にあっては世界の聖公会の聖職よりプロセスにおられない誰をも今、推薦出来ることを再三明言された。

委員会活動のポジチブな面としては;

  1. 詳しい略歴以外に、被推薦者の主教観、教会観、神学的傾向、礼拝学的傾向、牧会観、宣教観、またキリスト教倫理観、特に同性愛観等が明らかにされ、それが文書で全信徒代議員・聖職に配布された事。
  2. 質疑応答の形で、直接、被推薦者に質問する機会が信徒代議員・聖職に与えられた事(聖職2回、信徒代議員1回)。

問題点としては;

  1. 6ヶ月に亘る長い期間、公表された被候補者の心理的な負担。
  2. 質疑応答やビデオ配布自体がどこまで、本当の意味で選挙への一助となり得るか。 が考えられるように思う。