長年ブラジル人と交わっていると面白い発見もある。一般的かそれとも私だけの経験か判らないが、日本食というより日本食品と言うべきものを好むブラジル人でも、好まないものの一つに梅干が有るように思う。納豆でも平気で食べるブラジル人でも、梅干だけは酸っぱいと言って好まないような印象を私は持っているが、本当はどうなのであろうか。
サンパウロの中国食品店で干した甘い梅干を見つけて食べたことがあるが結構美味しかった。酸っぱい梅干は東南アジアでも食べられるのであろうか?
二十年程前まではサンパウロというより、ブラジルでは梅干は輸入品で貴重品であった。私も訪日帰りのお土産として重宝した時期もあった。従って昔は日系コムニティーでは、ブラジルに生えている花梅を塩で漬けて、梅干代わりとして食してきた。形は凡そ異なるが味は似ていると言えば似ている。その花梅は今でも時たま朝市で見かけるが、以前ドイツで肉の添え物として、甘く煮込んだ花梅に出会って驚いたことがある。あるいはヨロッパでは、昔から花梅は甘く煮て食べるのが正統な食べ方なのであろうか。
何時の頃からかサンパウロでは台湾梅が朝市で出回るようになり、結構自宅で梅干を漬ける日系家庭も多くなり、花梅も幾分出番を失ったように思う。
サンパウロで梅が朝市で出回る前、日本より持ち帰った貴重な梅干を次女が好み、親の知らないうちにいつのまにか梅干がなくなることが多かった。他の二人の娘は見向きもしなかったが、不思議に次女は大好物で、親が奥深く隠した梅干をちゃんと見つけ出していた。
ところが今度は8歳になる三世の孫の男の子が梅干が大好きで、黙っていると一回に4−5個を美味しそうに食べる。毎週来る度に持たせて帰すのは梅干である。ところが他の3人の孫は見向きもしない。後数ヶ月もすればサンパウロの朝市に梅と紫蘇が出回るはずである。このような食べ物は一世が居なくなっても、二世、三世に受け続かれていくのであろうか。黒い血の混じった縮れ毛の日系何世が酸っぱそうに、しうかも美味しそうに梅干を頬張る姿を想像するだけでも楽しくなる。
サンパウロ 伊東
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