ブラジル事情「修道会と教育」


 先週末、教会の会議がポルトアレグレ市の郊外のカトリックの女子修道会の建物で行われた。建物から一歩も外に出ることなく缶詰の三日間であった。施設はポルトアレグレ市から20キロほど離れた山中にあり、緑が豊かで小鳥の囀りが心地よい、幾分老朽化はしているものの素敵な宿泊施設であった。一応、各人に個室が準備されていたがなんと部屋には5つのベッドがあった。会議に参加したのは十数人であったが、少なくとも100人以上を収容できる施設である。

 実はこの女子修道会は修道女の減少に伴い、外部の団体の会議や修養会に賃貸してなんとか生き残っているとのことであった。チャペルなどは現在の15人程度の老齢化した修道女全員が50台以上)には不釣合いな、日本の学校の講堂ほどある大きなものであった。おそらく数十年前には若い修道女見習いの乙女たちで溢れていたのであろう。もちろん、教育設備をかねており、乙女たちはこの修道会の中で普通教育も受けたそうである。その頃は今以上にブラジルは貧しく貧困家庭の子女にとって、無料で教育を受ける機会はこのような修道会に入るしか方法はなかったのである。確かに信仰心から修道会に入ったものも居たであろうが、大多数は食い扶持を確保するためと、教育を受ける唯一の機会として入会したものと思われる。これは男子修道会においても同じであった。私の秘書なども貧困家庭出身で15歳から12年間修道会に属し、教育を受け27歳のとき、自らの意思で修道会を退会し、初めて社会の荒波に乗り出した。

 ところがブラジルもここ弐拾年ほど、義務教育の徹底政策、教材の無料化、奨学資金の授与などによりかなりの奥地でも、その教師の質や学校施設の貧しさは別にして、、貧困家庭の子女も教育を受けられるようになりつつある。この為、修道会の社会的意義が薄らぎ、修道会経営の小規模な学校兼修道会はは次々廃止に追い込まれた。また、全国的にカトリック教会を支えてきた総数約5万人に達する修道女・修道士の老齢化は否めず、カトリック教会に深刻な問題を提示している。これは単にカトリック教会の内部問題に止まらず、今まで公的団体がなし得なかった社会福祉、教育の担い手であった(無料の人材である)修道女の減少はそれなりに社会問題化しているようにも思われる。早急に国が、地方団体がそれらの事業の継承的担い手となることが求められているように私には思われる。

サンパウロ 伊東